プロジェクトメンバーのモチベーションは、プロジェクトの実行中にわたって、主に生産性に大きな影響を与えます。
・モチベーションとスキルの相関
モチベーションとスキルは相互に影響し合う関係にあります。
モチベーションが高い人は、仕事を通して、新しいスキルを学ぶための時間や資金と投入するでしょう。そして、スキルが向上すると自信がつき、さらにモチベーションが増加につながっていきます。
その結果、より難易度の高いプロジェクトや仕事へ挑戦する意欲として現れてきます。逆に、モチベーションが低下するとスキルの向上が見込めず、逆に陳腐化することになります。
・モチベーションの源泉
ソフトウェア開発においてモチベーションを生み出す主な要因は、新規性と進歩性です。たとえば、AIなど最先端である新規技術を採用するなど、市場の技術トレンドを先取りするようなプロジェクトです。しかし、プロジェクトとしては、未知の分野であるため、リスクが高く、失敗の確率が上がります。そのため、プロジェクトの実行可能性を脅かす要因にもなります。
モチベーションを向上できるような新規性と進歩性を盛り込んでいくにしても、リスクを低減させるようなアジャイルなど開発手法や手順を採用したり、先行して調査工程を挿入してリスクを低減させるなどの工夫を盛り込んでいくことが必要となります。
逆に、前と酷似したプロジェクトを延々と繰り返すことは、モチベーションを低下させ、ITエンジニアのスキルを硬直化させることになります。特に、このようなプロジェクトでは、うまく、安く、早いといったQCDの向上を目指すことぐらいしか目標がなくなり、重箱の隅をつつくようなマイクロマネジメントが促進されていくことになります。
このような官僚的なプロジェクトでは、「クリエイティブ」という要素は邪魔で、いかに時間を無駄にせず、目の前の「作業」を効率よく遂行することだけが評価されます。その結果、ITエンジニアの思考や行動が拘束され、モチベーションは消滅することになります。
・モチベーションは、ITベンダーには伝搬しない。それよりも、タスクを与えよ
プロジェクトに参加するITベンダーのITエンジニアには、原則として、マネジメントで言われる「モチベーション」はありません。
その理由は、プロジェクトへは、ビジネスとして稼ぐために参加しているだけであり、それ以上もそれ以下もないからです。決められたスコープに従って、やるべき作業を決められた納期で粛々と実施することに集中します。彼らは、プロのITエンジニアとして、決められた成果物を出すこと自体がモチベーションへと憑依しているといってもいいでしょう。
だから、モチベーションに期待するよりも、考えや思いをタスクにまで洗練化し、指示をすることに注力すべきです。
ただし、仮に、プロジェクト自体が新規性と進歩性に富んだものであり、クリエイティブなものであった場合、モチベーションが伝搬しないITベンダーとの温度差は、行動力や瞬発力の差として現れるでしょう。確かに、ITエンジニアの個人差があるにせよ、会社間の壁によって、モチベーションには上限があることを理解しておく必要があります。特に、自律的な行動を妨げる心理的な壁となるのです。
■ まとめ
「生産性は、管理ではなく、モチベーションによってもたらされる」
モチベーションを維持するには、コミュニケーションをとる必要があります。会議のような公式なコミュニケーションではなく、非公式なコミュニケーションによって、エンジニアという非マシンをマネジメントします。エンジニアは、孤独と変化に弱い生き物です。継続的なケアが必要です。